代休取得に期限はある? 適切な勤怠管理のためのポイント
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神奈川県の毎月勤労統計調査によると、事業所規模5人以上の事業所における令和3年中の現金給与総額は、1人平均月間327151円で、前年比0.5%の減少となりました。その一方で、総実労働時間は1人平均月間129.4時間と、前年比0.4%の増加となりました。前年と比較して賃金は減少したものの、全体の労働時間は増加した結果となっています。
人件費を抑制するため、従業員に代休を取得させたくても、業務が忙しいなどの理由で、なかなか代休取得が進まないケースもあるでしょう。就業規則などによって、代休取得の期限が設けられている場合、期限を過ぎたら原則として、代休を取得できなくなります。従業員の業務を調整するなどして、できる限り期限内に代休を取得するよう促しましょう。
この記事では、代休取得の期限や、代休の取得状況を適切に管理する方法などについて、ベリーベスト法律事務所 横須賀オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「毎月勤労統計調査 地方調査結果報告 令和3年分」(神奈川県))
1、代休取得に期限はある?
代休は休日出勤の代替休暇なので、休日出勤をした日から間近い時期に取得するのが望ましいです。
その一方で、代休取得に期限があるかどうかは、会社によってルールが異なります。
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(1)代休取得のルールは会社によって異なる|期限がある場合も
会社には、従業員に代休を取得させる法律上の義務はありません。
会社で導入されている代休制度は、各会社が独自に定めたルールなのです。
したがって、代休取得の要件などは、会社が定めるルールに従うことになります。
代休取得の期限については、「休日出勤から1か月以内」などと期限を定めている会社が多数派と考えられます。
その一方で、特に期限を設けていない会社も存在します。
自社のルールで代休取得に期限が設けられているかどうかは、就業規則などの規定を確認しましょう。 -
(2)期限を過ぎると原則取得できないが、休日労働の割増賃金が発生
会社のルール上、代休取得の期限を過ぎた場合、労働者は原則として、代休の取得を会社に請求することはできません。
ただし、会社と労働者の合意に従い、期限後の代休取得を認めることはできます。
なお、代休を取得しなかった場合には、休日労働をした日の割増賃金全額が、残業代として発生する点に注意しましょう。
(代休を取得した場合にも、休日労働の割増分に相当する賃金は、残業代として発生します。)(例)- 1時間当たりの基礎賃金:2000円
- 所定労働時間:8時間
- 2022年1月30日に休日労働8時間
① 2022年2月1日に代休を取得した場合
残業代
=2000円×1.35×8-2000円×8
=5600円
② 代休を取得しなかった場合
残業代
=2000円×1.35×8
=21600円
2、代休・振替休日・有給休暇の違いは?
代休・振替休日・有給休暇は、いずれも休日出勤の代わりとして与えられることがありますが、法的には互いに全く違うものです。
代休・振替休日・有給休暇、3つの違いを整理しておきましょう。
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(1)代休|休日労働の代わりに後から休みを取る日
「代休」とは、休日労働をした代わりに、後から別の労働日に休みを取る日を意味します。
先に休日労働が行われ、後から代休日が決まるのが、代休の特徴です。
代休の場合でも、休日労働をした日の賃金は、35%以上の割増率によって計算されます。
ただし、代休を取得した日は無給となるため、トータルすると、休日労働の割増分だけ残業代が発生することになります(前掲計算例参照)。 -
(2)振替休日|事前に労働日から振り替えられた休日
「振替休日」とは、事前に労働日と休日を入れ替えた結果、休日となった日を意味します。
実際の労働が行われる前に、労働日と休日の振替が行われる点で、代休とは時系列が異なっています。
振替休日の場合、働いた日は労働日の扱いとなるため、割増賃金ではなく通常の賃金が適用されます。
その一方で、休んだ振替休日は無給となるため、トータルすると、残業代は発生しません。 -
(3)有給休暇|毎年労働者に付与される有給の休暇
「有給休暇」は、継続勤務年数に応じて、毎年労働者に付与される有給の休暇であり、法律上使用者に義務付けられた制度でもあります。
代休・振替休日の場合、休んだ日は無給となるのに対して、有給休暇の場合、休んだ日にも賃金が発生するのが大きな特徴です。
したがって、年間の取得日数には限度がありますが、代休や振替休日よりも、有給休暇を取得する方が労働者にとって有利となります。
3、代休を取得させないのは違法?
従業員が代休の取得を希望しているにもかかわらず、
- 会社の側が代休取得を認めない
- 業務量の過多によって、代休を取得する余裕がない
というケースも見受けられます。
このような場合、法的な観点から問題はないのでしょうか。
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(1)会社のルールに則っていれば問題ない
前述のとおり、従業員に代休を取得させることは、会社の法律上の義務ではありません。
よって、代休を取得させなかったとしても、労働基準法などの法規には違反しません。
代休取得の制度は、会社ごとに定められています。
したがって、会社があらかじめ定めるルールに則っていれば、従業員に代休取得を認めなくても特に問題ありません(ただし、その程度があまりに度を越している場合などは、契約違反として何らかの民事上の責任を負う可能性もゼロではありません)。
たとえば、代休取得の期限を過ぎている場合などは、代休取得を認めなくてもよいケースの典型例です。 -
(2)36協定違反を指摘される可能性に注意
ただし、時間外労働(法定労働時間を超える残業)などに関する労使協定(36協定)において、代休取得に関する取り決めがなされている場合、その内容に従うことが必要です。
一例としては、「従業員が休日労働をした場合、会社は、従業員が近接した時期において代休を取得できるように努める」という趣旨の内容が、36協定で規定されることがあります。
このような規定が置かれている場合に、代休取得を希望する従業員の業務量が過多となっているのを、会社が漫然と見過ごしていると、労働組合から36協定違反を指摘されるかもしれません。
36協定で代休に関する規定が盛り込まれている場合には、労使間トラブルを防ぐため、従業員に対して積極的に代休を取得するよう奨励しましょう。
4、代休取得の状況を適切に管理するには?
会社が代休取得の状況を把握していなかったり、代休取得の時期があまりにも偏ったりすると、会社の業務や財務に悪影響が生じかねません。
代休取得の状況を適切に管理するには、次の対策を講じましょう。
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(1)勤怠管理システムを導入・活用する
客観的なデータによって、各従業員の代休取得状況を把握することは、代休管理を行うための大前提と言えます。
従業員全員の勤怠を登録して、会社がそれを網羅的に閲覧できるシステムを導入すれば、各従業員の代休取得状況が一目瞭然です。
まだ勤怠管理システムを導入していない会社は、この機会に導入・活用をご検討ください。 -
(2)休日労働から近い日程で代休を取得するよう促す
未取得の代休がたまってしまうと、会社にとっては、以下のデメリットが発生してしまいます。
- 従業員の長時間労働の傾向が強まる
- 後で代休を取得する従業員が多数発生し、業務に穴が空く
- 代休が未消化のまま期限切れとなり、人件費が増える
代休がどんどんたまっていく事態を防ぐためには、従業員に対して、休日労働が行われた日と近接した日程で、できるだけ早めに代休を取得するように促しましょう。
たとえば、直属の上司などから声掛けをしてもらったり、社内報などで代休の取得を奨励したりする方法が効果的です。 -
(3)業務量を調整して、代休を取得しやすいようにする
代休を取得したくても、仕事が忙しすぎて、代休を取得する余裕がない従業員がいる可能性もあります。
このような従業員は、長時間労働による身体や精神への負担という観点からも、かなり心配な状況にあると言えるでしょう。
仕事が忙しい従業員にも代休取得を促すためには、業務量の調整が必要不可欠です。
経営陣や労務担当者は、現場から各従業員の業務負担の状況などをヒアリングするようにしましょう。
そのうえで、重い負担を負っている従業員については、業務の一部を他の従業員に引き取らせて、業務量を調整するなどし、できる限り全員が代休などを取得しやすいような状況を作ることが大切です。
5、まとめ
代休取得の期限については、法律上のルールは特になく、各会社が就業規則などで定めるルールによって決まります。
期限が過ぎた場合には、会社は従業員に対して代休を与えなくても、基本的には問題ありません。
ただし、36協定で代休についての定めがある場合には、36協定に違反していないか確認する必要があります。
また、忙しすぎて代休を取得する余裕がないという従業員は、長時間労働による過重負荷が懸念されるため、業務量の調整などを行いましょう。
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