別居時の持ち出しリスト|離婚のための別居の準備と注意点を解説
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離婚の話し合いにはある程度の時間がかかるのが一般的です。そのため、同居したまま離婚の話し合いを進めるのが難しいときには、別居を選ぶということも一つの方法です。
離婚を前提に別居をする際には、自宅から荷物を持ち出す必要があります。しかし、別居後は自宅に荷物を取りに戻るのは難しくなることが多いため、事前に「荷物の持ち出しリスト」を作成するなどしてしっかりと準備しておくようにしてください。
今回は、離婚のための別居の準備に必要になる別居時の持ち出しリストと別居時の注意点などについて、ベリーベスト法律事務所 横須賀オフィスの弁護士が解説します。


1、別居時の持ち出しリストは?
焦って別居をすると生活に必要な荷物がなくて困ることもあります。そうならないよう、事前に持ち出しリストを作成して、必要な荷物を漏れなく持ち出せるよう準備を行うことが大切です。
以下では、別居時の持ち出しリストを紹介します。
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(1)貴重品
財産的価値の高い貴重品については、すべて持ち出すようにしてください。
- 預貯金通帳や実印
- 生命保険の証書
- クレジットカード
- キャッシュカード
- 宝石や貴金属
- 財布
- スマートフォン
これらの貴重品は、別居後生活していくために必要な財産ですので、最優先でリストに加えましょう。貴重品を自宅に残したまま別居をしてしまうと相手に処分される可能性もありますので注意が必要です。
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(2)身分証明書
貴重品と同様に必ず持ち出さなければならない荷物が身分証明書です。
別居後は、さまざまな手続きや契約をすることになりますが、その際、身分を証明する書類の提示が求められます。以下のような身分証明書がなければスムーズに手続きを進めることができませんので、すべて持ち出しリストに加えてください。- 免許証
- 健康保険証
- マイナンバーカード
- パスポート
- 年金手帳
- 社員証
- 入館証
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(3)生活必需品
別居後は基本的には自宅に戻ることができないと考えておくべきです。そのため、当面の生活に困らないように、以下のような生活必需品も持ち出しリストに加えておきましょう。
- 衣類
- 常備薬
- 寝具
- 靴
- 化粧品
なお、持ち出す荷物が多くなると引っ越しが大変になりますので、最低限の生活必需品を持ち出すようにして、別居後足りないものについてはその都度購入することもできます。
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(4)離婚手続きに必要なもの
別居後は相手と離婚の話し合いを進めていくことになりますが、自宅に離婚手続きに必要な資料などを残したままでは、スムーズに話し合いを行うことができません。そのため、離婚手続きに必要になる以下のようなものも持ち出しリストに加えておきましょう。
- 配偶者の不倫やDVを示す証拠(日記やデータ類)
- 相手の財産を示す資料のコピー(通帳、保険証書、不動産の権利書)
- 相手の収入を把握する資料のコピー(給与明細、源泉徴収票)
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(5)子どもがいる場合は育児や教育に必要なもの
子どもを連れて別居する場合には、子どもの生活や教育に必要になる荷物も持ち出さなければなりません。
- 通学・通園に必要なもの(教科書、制服、ランドセル、連絡帳など)
- 育児に必要なもの(哺乳瓶、ミルク、おむつ、母子手帳など)
- 子どものおもちゃやゲーム
- 学習に必要なもの(参考書、ノート、筆記用具、タブレット)
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(6)その他処分されたら困るもの
記念品や思い出の品など処分されたら困るものがある場合は、それも持ち出しリストに加えておきましょう。
- 子どもの写真やアルバム
- 親の形見の品
- 親友からのプレゼント
- 結婚前から大切にしている思い出の品
2、別居時に持ち出してはいけないもの
ここまでは別居時に持ち出すべきものを紹介しましたが、反対に持ち出してはいけないものも存在します。以下では、別居時に持ち出してはいけないものを紹介します。
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(1)相手の特有財産
「特有財産」とは、夫婦の一方が他方の貢献なく維持・形成した財産のことであり、財産分与の対象には含まれません。特有財産を持ち出してしまうと、別居後のトラブルの原因になるおそれがあり、場合によっては窃盗罪などの罪に問われる可能性もあります。
特有財産に該当するかどうかは、「財産の名義」ではなく、「夫婦の協力関係により維持・形成されたものであるか」という観点から判断します。そのため、以下のような財産については持ち出してはいけません。- 婚姻前から貯めていた預貯金の通帳
- 婚姻前から契約していた生命保険の証書
- 親から相続した不動産の権利証
- 婚姻前に購入した家具や家電
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(2)共有財産を持ち出す
「共有財産」とは、夫婦の協力により維持・形成された財産で、財産分与の対象に含まれます。共有財産であれば夫婦どちらにも権利がありますので、持ち出してはいけないというわけではありません。
しかし、相手名義の財産(預貯金、保険など)を持ち出してしまうと相手の反発を招き、円満な話し合いの妨げになるリスクがあります。また、持ち出した財産の使途をめぐって後々トラブルになるリスクもありますので、常識的な範囲での持ち出しにとどめておくべきでしょう。また、共有財産を持ち出すのではなく、携帯で画像を撮影しておくというのも一つの手です。 -
(3)持ち出す優先度が低いもの
離婚を前提とした別居をする場合、将来の離婚に備えて必要なものをすべて持ち出そうとする方も少なくありません。
しかし、自宅から持ち出す優先度が低いものまで持ち出してしまうと相手の生活に支障が生じてしまう可能性があります。そうなると荷物の持ち出しに関する話し合いがメインになってしまい、肝心の離婚の話し合いがストップしてしまいます。
また、別居後の住居によってはすべての荷物を運び出すだけのスペースがないこともありますので、基本的には最低限必要なものだけを持ち出すようにし、その後必要なものが出てきたときは、別居後に購入した方がよいでしょう。
お問い合わせください。
3、別居する際の注意点
離婚を前提に別居をする際には、以下の点に注意が必要です。
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(1)別居後に忘れ物を取りに帰れないと想定しておく
離婚を前提に別居をした場合、夫婦関係がすでに破綻していますので、相手に忘れ物を取りに戻りたいと伝えても無視や拒否をされるケースが多いです。また、忘れ物を送って欲しいと伝えても応じてくれない可能性が高いです。
さらに、相手が応じてくれないからといって勝手に自宅に立ち入ると、警察に通報されるなどのトラブルの原因になりますのでやめた方がよいでしょう。
このように忘れ物があったとしても別居後に取りに戻るのは難しいため、別居をする際には、持ち出しリストを作成し、持ち出す荷物に漏れがないように別居準備を進めることが大切です。 -
(2)別居後に夫が勝手にものを捨てた場合は損害賠償を請求できる可能性がある
夫婦関係が悪化しているケースでは、別居をしたことに腹を立てた相手が、自宅に残していった荷物を勝手に処分してしまうことがあります。
いったん処分されてしまったものを取り戻すのは難しいため、処分されて困るものがあればすべて持ち出すようにしてください。事情があってどうしても持ち出すことができないものについては、事前に写真を撮っておくことで、勝手に処分されたものについて損害賠償を請求できる可能性があります。 -
(3)「荷物を送るために別居先を教えろ」と言われても安易に応じてはいけない
相手に別居先の住所を教えずに別居をすると、相手から「荷物を送るために別居先を教えろ」などと連絡がくることがあります。
しかし、相手に別居先の住所を教えると子どもの連れ去りや嫌がらせ、暴力などのリスクがありますので安易に応じてはいけません。どうしても送ってもらいたい荷物があるなら、実家の住所を伝えるか、弁護士に依頼して弁護士の事務所に送ってもらうようにしてください。 -
(4)DVのおそれがある場合は住民票の異動に関して役所に相談を
配偶者からのDVを理由に別居をする場合、相手に別居先を知られないようにしなければなりません。そのような方は、市区町村にDV等支援措置の申出をすることで、相手が住民票や戸籍の附票の写しなどの閲覧や交付をできないようにすることが可能です。
離婚前なら配偶者としての立場で相手の住民票などが取得できてしまいますので、必ず支援措置の手続きをするようにしてください。 -
(5)別居期間中も婚姻費用(生活費、養育費など)の請求ができる
離婚を前提とする別居であっても正式に離婚が成立するまでは夫婦であることに変わりありませんので、双方の収入状況、子の監護状況にもよりますが、別居期間中の婚姻費用を請求することができます。
経済的に不安な状態では安心して離婚の話し合いができず、焦って不利な条件で離婚してしまうこともあります。そのため、じっくりと離婚の話し合いをするためにも必ず婚姻費用を請求するようにしてください。
4、離婚トラブルは弁護士に相談を
離婚トラブルでお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)相手との交渉を任せられる
離婚をするにはまずは相手との話し合いが必要になります。
しかし、別居した状態だとお互いに都合が合わずになかなか離婚の話し合いが進まないケースがあります。また、話し合いの場をもうけても感情的になってしまい、肝心の離婚の話ができないケースも少なくありません。
このような場合には弁護士に離婚の交渉を依頼することも一つの方法です。弁護士が代理人として相手との交渉を行うことで、冷静に話し合いを進めやすくなり、交渉のストレスも大幅に軽減されます。ですから、離婚の交渉は弁護士に依頼するのがおすすめです。 -
(2)財産分与について専門的なアドバイスを受けられる
離婚時には、財産分与により夫婦の共有財産を清算することができます。
財産分与にあたってはお互いの財産を洗い出す必要がありますが、相手がすべての財産を素直に開示してくれるとは限りません。弁護士であれば財産調査のポイントを熟知していますので、相手の財産を把握するための方法についてアドバイスを受けられます。
また、共有財産に住宅ローンが残った自宅が含まれている場合、財産分与の評価や方法で揉めることが多いため、事前に専門的なアドバイスを受けることでトラブルを軽減しやすくなります。 -
(3)モラハラやDVがあった場合は慰謝料請求を検討できる
配偶者からモラハラやDVがあったときは、慰謝料を請求するできる可能性があります。
ただし、慰謝料請求をするには相手によるモラハラやDVがあったことを証拠により立証していかなければなりません。弁護士に相談すれば慰謝料請求に必要になる証拠収集の方法や慰謝料額の相場についてアドバイスを受けられますので、より有利に慰謝料請求を進めやすくなるでしょう。
5、まとめ
別居時には、財産的価値が高いものや離婚手続きに必要なものを持ち出すことが大切です。ただし、相手の特有財産や共有財産を過度に持ち出すことはトラブルの原因になりますので避けたほうがよいでしょう。
別居した後の離婚の進め方やトラブルが不安な方は、ベリーベスト法律事務所 横須賀オフィスまでお気軽にご相談ください。
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