「義両親が嫌い」を理由に離婚できる? 別れに向けた準備と注意点
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夫婦関係に問題がなかったとしても、義両親との関係がうまくいかないことが原因で、結婚生活を続けることが難しくなる場合があります。
協議離婚や調停離婚であれば「義両親が嫌い」という理由だけでも夫婦間で合意が成立するなら離婚できますが、裁判離婚の場合には「法定離婚事由」が必要になります。
本コラムでは、「義両親が嫌い」という理由で離婚する方法や離婚する際の準備事項などについて、ベリーベスト法律事務所 横須賀オフィスの弁護士が解説します。
1、「義両親が嫌い」を理由に離婚する方法
まず、「義両親が嫌い」という理由で離婚をすることができるのかどうかについて解説します。
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(1)お互いの合意があればどのような理由であっても離婚可能
原則として、「義両親が嫌い」というのが理由であったとしても、お互いに離婚することに合意しているのであれば、離婚することができます。
まずは夫婦の話し合いにより、離婚をするかどうか、離婚する場合にどのような条件で離婚するかを決めていきましょう。
このような話し合いによる離婚を「協議離婚」といいます。
また、夫婦だけの話し合いで離婚の合意に至らないときは、家庭裁判所に離婚調停の申し立てることを検討してください。
離婚調停では裁判所を利用しますが、基本的には話し合いの手続きであるため、お互いに離婚の合意が成立すればどのような理由でも離婚することが可能です。
このように、「義両親が嫌い」という理由で離婚する場合には、まずは協議離婚や調停離婚による離婚を目指していくことになるでしょう。 -
(2)合意が得られない場合には法定離婚事由が必要
協議離婚や調停離婚では、離婚の合意が得られない場合には、最終的に家庭裁判所に離婚訴訟を提起する必要があります。
しかし、裁判離婚においては、以下のような「法定離婚事由」がなければ裁判所に離婚を認めてもらうことができません。- 不貞行為
- 悪意の遺棄
- 配偶者の生死が3年以上不明
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
「義両親が嫌い」というだけでは、上記の法定離婚事由のいずれにも該当しませんので、この理由だけでは裁判離婚は難しいといます。
しかし、「義両親からDVがありながらも夫は見て見ぬふりをしていて婚姻関係の継続が難しい」などの事情がある場合には、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたり、裁判での離婚が認められる可能性があります。
2、夫婦仲を改善するためにできること
義両親との関係に問題があったとしても、夫婦仲を改善できるようであれば、離婚以外の選択肢も検討してみましょう。
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(1)義両親との同居が原因であるなら別居を検討する
仲の悪い義両親と同居していると、どうしても義両親との間で衝突が生じてしまうでしょう。
毎日のように顔を合わせていると、「義両親が嫌い」という気持ちがどんどん強くなっていくはずです。
このような事態を回避するためには、早めに義両親との同居を解消すべきです。
義両親と距離を置くことができれば、「義両親が嫌い」という感情も少しは落ち着くかもしれません。 -
(2)配偶者に義両親の嫌いなところを話して理解してもらう
義両親との関係が悪化したとしても、配偶者が味方になってくれるなら、夫婦仲は維持することができます。
「義両親が嫌い」という感情を自分だけで抱えてしまうのではなく、配偶者にも伝えて理解してもらうことで、離婚という事態の回避をはかりましょう。
ただし、配偶者にとっては自分の両親の悪口を言われることになるので、伝え方には注意が必要です。 -
(3)義両親と接点を持たないようにする
義両親のことが嫌いになったとしても、義両親と接点を持たないようにすれば、義両親との関係で揉めることを回避できます。
たとえば、お盆休みや年末年始にも義実家に顔を出さず、一切会わない、ということも選択肢のひとつになるでしょう。
義両親からは快く思われないかもしれませんが、「夫婦関係が悪化するよりはマシだ」と割り切って考えましょう。 -
(4)言われたことを受け流すように意識を変える
義両親の言動を真に受けてしまうことも、相手のことを嫌いになる原因のひとつかもしれません。
たとえば義両親としては悪意なく発言している言葉であっても、受け取る側からすると嫌みを言われているように感じることもあるでしょう。
このような場合には、言われたことを受け流すように意識を変えるよう努めてみてください。
どんなことを言われても気にしないでいられるなら、これ以上義両親との関係が悪化することを避けられる可能性があります。
3、離婚に向けて進めるべき4つの準備
義両親との関係や結婚生活の状況が改善できず、「もう離婚しかない」と決断した場合には、以下のような準備を進めていってください。
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(1)財産分与のための財産チェック
離婚時には、財産分与により夫婦が婚姻期間中に築いた財産を清算することができます。
また、分与の対象になる財産は、「財産の名義」といった形式面だけではなく、婚姻期間中に「夫婦の協力関係により維持・形成された財産であるか」という実質面で判断されることになります。
夫婦であっても、配偶者がどのような財産を持っているのかを正確に把握できているとは限りません。
適正な財産分与を行うためにも、まずは相手の財産をしっかりと把握することが大切です。 -
(2)慰謝料請求のための証拠収集
「配偶者からDVやモラハラを受けていた」「配偶者が不貞行為をしていた」という場合には、配偶者に対して、慰謝料請求をすることができます。
ただし、慰謝料請求をするためには、請求する側が、配偶者が不法行為をしていたという事実を証明する必要があります。
したがって、まずは不法行為を証明するための証拠を収集することが重要になります。
どのような証拠が必要になるのかは、具体的な状況によって異なってくるため、弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。 -
(3)親権、養育費、婚姻費用など希望する条件の整理
離婚をする際には「離婚するかどうか」だけでなく「どのような条件で離婚をするのか」についても取り決めを行わなければなりません。
たとえば、離婚前に別居をするのであれば、婚姻費用について取り決める必要があります。
また、夫婦に子どもがいる場合には、親権や養育費、面会交流などについての取り決めも必要になるのです。
スムーズに離婚の話し合いを進めるためにも、相手に離婚を切り出す前に希望する離婚条件をしっかりと整理しておくことをおすすめします。
また、離婚条件には金額の相場や決め方などのルールがあるため、ひとりでは決められないという場合には、弁護士に相談することも検討してください。 -
(4)今後の住まいや生計の確保
離婚後は、夫婦それぞれが別々に生活することになるため、自宅を出ていく予定の方は新しい住まいを確保する必要があります。
「離婚後もしばらく一緒に生活する」という事態を避けたいのなら、早い段階から、新たな住まいの確保に向けて動き出すことが大切です。
また、離婚後は、相手から生活費の援助を受けられなくなるため、専業主婦(主夫)である方は新たな仕事を探すなどして生計の確保を行うことも必要になります。
4、配偶者との別居における注意点
以下では、配偶者と別居をする場合に注意すべきポイントを解説します。
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(1)配偶者の同意を得てから別居をする
義両親が嫌いになり、配偶者との関係も悪化してしまった「一日でも早く別居したい」と考える方も多いでしょう。
しかし、勝手に別居を始めたことが、双方の生活状況などによっては、「悪意の遺棄」に該当すると判断されることもあることから、今後の離婚手続きにおいて不利になる可能性がある点に注意してください。
配偶者からDVやモラハラを受けているなどの事情がない限りは、配偶者の同意を得てから別居を始めることをおすすめします。 -
(2)別居をすると証拠の確保が困難になる
別居をすることで配偶者と顔を合わせる必要がなくなりますので、平穏な生活を送ることができるというメリットがあります。
しかし、別居をしてしまうと、相手の財産を把握することや慰謝料請求のための証拠の確保が難しくなってしまいます。
別居をする場合には、これらの証拠をしっかりと収集してから行うことをおすすめします。」 -
(3)別居中でも離婚するまでは異性と交際をしない
離婚を前提に別居をしている方のなかには「早く次のパートナーを見つけたい」と考える方もおられるでしょう。
しかし、別居をしていたとしても、離婚が成立するまでは、夫婦であることには変わりありません。
したがって、異性との交際は、離婚が成立するまでは控えた方が賢明です。
もし、配偶者以外の相手とセックスをして、そのことが相手側に発覚してしまった場合には、ご自身が「有責配偶者」となって不貞行為に関する慰謝料を請求されるリスクがあります。
また、有責配偶者になってしまった側からの離婚請求は法廷では認められないので、離婚したくてもできない状況に陥ってしまうおそれがあるのです。
配偶者以外の相手とセックスをしたり、性的な関係を築いたりすることは、とくに避けるべきでしょう。
5、まとめ
配偶者との話し合いにより離婚の合意が成立したら、義両親が嫌いという理由であっても離婚することは可能です。
しかし、離婚の合意が成立しない場合には、法定離婚事由がなければ離婚することができません。
「義両親が嫌い」という理由で離婚を決意した方は、弁護士に依頼して、そもそも離婚できるかどうかを判断してもらったり、準備を適切に進めるためのアドバイスを受けたりしましょう。
離婚に関するお悩みや困りごとは、まずはベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています