養育費はバツ2で現在支払中の相手にも払ってもらえる? 適切な請求法

2024年10月16日
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養育費はバツ2で現在支払中の相手にも払ってもらえる? 適切な請求法

2022年の横須賀市の婚姻件数は1257件で、離婚件数は530件でした。

子連れで離婚する際、養育費の交渉は重要ですが、相手がバツ2だった場合、養育費の計算方法に注意する必要があります。最初の結婚相手との間にも子どもがいる場合は、特殊なケースに当たるので養育費算定表を利用できないためです。

このようなケースでは、弁護士に相談して、養育費の適正額を計算してもらうとよいでしょう。本記事では、バツ2の配偶者に対して請求できる養育費の計算方法などを、ベリーベスト法律事務所 横須賀オフィスの弁護士が解説します。


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1、バツ2になる配偶者にも養育費を請求できる?

配偶者が過去に1度離婚している場合、自分とも離婚すると「バツ2」になります。

配偶者がバツ2になる場合、前妻(前夫)との間にも子どもがいて、自分との間にも子どもがいるというケースもあります。

この場合でも、離婚後は元配偶者に対して養育費を請求できます。ただし、元配偶者が扶養すべき子どもが多い分、養育費は減額されることが多い点に注意が必要です。

  1. (1)養育費とは

    養育費とは、子どもを養育費するために必要な費用です。生活費・教育費・医療費などが含まれます。

    子どもの父母が離婚する場合、親権者でない側が親権者に対して、毎月養育費を支払うのが一般的です。また、医療費や進学費用などとして臨時的な出費が発生する場合は、養育費の一種である「特別費用」として相手方に請求できることがあります。

    養育費の支払い義務は、親子間の扶養義務を根拠とするものです(民法第877条第1項)。

    父母が離婚しても、子どもとの間の親子関係は続くので、離婚後も養育費を支払う義務を負います。

  2. (2)配偶者がバツ2になる場合、養育費減額の可能性がある

    自分との離婚によって配偶者がバツ2になる場合には、前妻(前夫)との間にも、自分との間にも子どもがいるケースがよくあります。

    この場合、自分が元配偶者から受け取れる養育費の金額は、他に子どもがいないケースに比べて減額される可能性が高いと考えられます。元配偶者の扶養能力(=養育費を負担する経済力)が、前妻(前夫)の子と自分の子の間で分散されてしまうためです。

    このようなケースでは、養育費の金額を求める際に、特殊な計算方法を用いる必要があります。具体的な計算方法は後述しますが、難しい部分も多いので弁護士にアドバイスを求めましょう。

2、バツ2になる配偶者に対する養育費の請求方法

自分との離婚によって配偶者に対して養育費を請求する場合は、「離婚協議」「離婚調停」「離婚訴訟」の手続きによります。
なお、離婚時に養育費を取り決めていなかった場合でも、離婚後に、協議や調停で養育費を定めることは可能です。その場合は当事者間の協議、調停(審判)のいずれかの方法で決めることとなります。

  1. (1)離婚協議

    「離婚協議」は、配偶者と話し合って離婚条件を取り決める手続きです。
    財産分与・年金分割・慰謝料・婚姻費用・親権・面会交流などの離婚条件と併せて、養育費についても離婚協議において話し合うのが一般的です。

    離婚協議がまとまったら、合意内容を記載した離婚協議書を作成・締結しましょう。離婚協議書は公正証書で作成すれば、養育費などが不払いとなった際に、直ちに強制執行を申し立てることができます
    公正証書を作成しなかった場合、養育費の未払いが生じても強制執行を行うことができず、調停審判といった裁判手続をとらなければならなくなってしまいますのでご注意ください。

  2. (2)離婚調停

    「離婚調停」は、家庭裁判所において調停委員を通じて話し合い、離婚条件を取り決める手続きです。養育費についても、その他の離婚条件と併せて離婚調停で話し合うことができます。

    調停案に夫婦双方が同意した場合は、調停によって離婚が成立します。調停調書は、養育費などが不払いとなった際の強制執行の申立てに用いることができます。

  3. (3)離婚訴訟

    「離婚訴訟」は、裁判所に対して強制的に離婚を成立させる判決を求める手続きです。離婚を求める側(=原告)が法定離婚事由(不貞行為・悪意の遺棄など)を立証すれば、原則として判決により離婚が成立します。このとき、調停同様、養育費も一緒に決めてもらうことができます。

    離婚判決が言い渡される場合は、養育費などの離婚条件についても判決主文で示されます。離婚訴訟の確定判決は、養育費などが不払いとなった際の強制執行の申立てに用いることができます。

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3、2カ所に養育費を支払う配偶者から受け取れる養育費の金額は?

離婚後の元配偶者が、前妻(前夫)と自分の両方に対して養育費を支払う場合、その金額を「養育費算定表」によって求めることはできません。

特殊な計算方法を用いる必要があるので、弁護士に計算を依頼することをおすすめします。

  1. (1)養育費算定表は利用できない

    裁判所は、養育費を計算する際の参考になる「養育費算定表」を公表しています。
    しかし養育費算定表は、離婚する当事者が他に子どもを持っていないケースを想定したものです。

    したがって、バツ2になる相手が2人に対して養育費を支払う場合には、養育費算定表を用いることはできません(再婚相手との間に子どもができた場合や、養子縁組をした場合なども同様)。

  2. (2)バツ2の配偶者から受け取れる養育費の計算方法

    バツ2になって二重に養育費を支払う相手(=養育費支払い義務者)から、自分が受け取れる養育費の金額を計算する方法は、以下のとおりです。

    <ステップ1>相手と自分の「基礎収入」を求める
    「基礎収入」を求める計算式は以下の通りです
    【基礎収入=① 総収入×② 基礎収入割合】
    1. ① 総収入は、給与や事業所得、不動産所得などすべての収入が対象です。
    2. ② 基礎収入割合は、家庭裁判所で割合が定められています(※下記表参照)。
      サラリーマン(給与所得者)か自営業者かによって、総収入額や基礎収入割合の求め方が変わります。

    【計算例】
    相手:1000万円の給与所得者

    →相手の基礎収入は400万円(=1000万円×40%)
    自分:200万円の給与所得者
    →自分の基礎収入は86万円(=200万円×43%)


    サラリーマン(給与所得者)の基礎収入割合の一覧

    総収入額(=源泉徴収票の支払金額) 基礎収入割合
    0~75万円 54%
    ~100万円 50%
    〜125万円 46%
    ~175万円 44%
    ~275万円 43%
    ~525万円 42%
    ~725万円 41%
    ~1325万円 40%
    ~1475万円 39%
    ~2000万円 38%


    自営業者の基礎収入割合の一覧

    総収入額(=確定申告時の課税所得金額) 基礎収入割合
    0~66万円 61%
    ~82万円 60%
    〜98万円 59%
    ~256万円 56%
    ~349万円 57%
    ~392万円 56%
    ~496万円 55%
    ~563万円 54%
    ~784万円 53%
    ~942万円 52%
    ~1046万円 51%
    ~1179万円 50%
    ~1482万円 49%
    ~1567万円 48%


    <ステップ2>子の生活費を求める
    義務者の基礎収入のうち、子どもの生活に充てるべき金額を求めます。

    【子の生活費=義務者の基礎収入×子の生活費指数合計※÷(100+子どもの生活費指数合計)】

    ※生活費指数:14歳以下の子については1人当たり62、15歳以上の子については1人当たり85

    相手が二重に養育費を支払う場合は、相手が扶養する子ども全員の生活費指数を計上するため、自分が受け取れる養育費の金額が相対的に少なくなります。

    【計算例】
    相手:1000万円の給与所得者(基礎収入は400万円)
    自分:200万円の給与所得者(基礎収入は86万円)
    相手と自分の間の子ども:2人(8歳と6歳)
    相手と前妻の間の子ども:1人(15歳)

    自分の子の生活費
    =400万円×(62+62)÷(100+62+62+85)
    =160万5178円

    ※相手と前妻の間の子どもがいなければ、自分の子の生活費は221万4286円


    <ステップ3>受け取れる養育費の額を求める
    自分の子どもの生活費を相手と自分で分担し、自分が相手に対して請求できる養育費の額を計算します。

    【養育費=子の生活費×相手の基礎収入÷(相手の基礎収入+自分の基礎収入)】

    【計算例】
    相手:1000万円の給与所得者(基礎収入は400万円)
    自分:200万円の給与所得者(基礎収入は86万円)
    相手と自分の間の子ども:2人(8歳と6歳)
    相手と前妻の間の子ども:1人(15歳)

    養育費(年額)
    =160万5178円×400万円÷(400万円+86万円)
    =132万1134円

    ※月額換算で11万95円
    ※相手と前妻の間の子どもがいなければ、月額換算で15万1871円


    上記の計算例からも分かるように、離婚する配偶者が前妻(前夫)の子どもについても養育費を支払っている場合は、自分が受け取れる養育費の金額は少なくなってしまいます。

4、離婚を検討している方が弁護士に相談するメリット

配偶者との離婚を検討している方は、弁護士に相談することをおすすめします。

弁護士に相談すれば、状況に応じた適正な離婚条件の内容についてアドバイスを受けられます。養育費についても、相手に対して請求できる適正額を計算してもらえます。

特に、自分との離婚によって配偶者がバツ2になる場合は、養育費について複雑な計算を要するケースが多いので、弁護士へアドバイスを求めるのが安心です

また、弁護士には離婚手続き全般の対応を依頼できます。配偶者と直接話し合う必要がなくなり、調停・訴訟の手続きも弁護士に一任できるので、労力やストレスが大幅に軽減されます。

離婚を考えている方や、慰謝料請求について不安がある方は、お早めに弁護士へご相談ください。

5、まとめ

配偶者がバツ2の場合は、養育費の計算に当たって特殊な計算が必要となることがあります。十分かつ適切な養育費を計算するためには、弁護士のサポートを受けることが大切です。

ベリーベスト法律事務所では、離婚や養育費の請求に関するご相談を随時受け付けております。離婚問題の実績がある弁護士が親身にお話を伺います。

配偶者との離婚や養育費の請求をご検討中の方は、ベリーベスト法律事務所 横須賀オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています