刑事事件の示談|流れ・タイミング・示談金の相場など

2023年01月26日
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刑事事件の示談|流れ・タイミング・示談金の相場など

神奈川県警察の資料によると、令和3年における横須賀市内での刑法犯の認知件数は1146件でした。そのうち窃盗犯は829件で、自転車の窃盗が176件、万引きが237件と多数を占めています。

刑事手続きにおける重い処分を回避するためには、被害者との「示談」を成立させることが大きな意味を持ちます。では、示談とは具体的にどのようなことをして、どのような流れで進めていくのでしょうか。もし、捜査機関に逮捕されてしまい、罪を犯したことに心当たりがある場合には、なるべく早く弁護士へご相談いただき、早期に示談交渉を開始しましょう。

この記事では、刑事事件における示談の概要・タイミング・手続きの流れなどを、ベリーベスト法律事務所 横須賀オフィスの弁護士が解説します。

(出典:「過去の犯罪統計資料 令和3年確定値 刑法犯 罪名別 市区町村別 認知件数」(神奈川県警察))

1、刑事事件の「示談」とは?

「刑事事件では示談が大切」ということは、多くの方が耳にしたことがあるかと思います。
この「示談」とはそもそも何なのかについて、まずは基本的なポイントを理解しておきましょう。

  1. (1)示談=被害者に示談金を支払って和解すること

    刑事事件における「示談」とは、被疑者・被告人が被害者との間で協議を行い、示談金を支払う等して和解することを意味します。

    示談を行うことの最大の意義は、被害者に生じた損害を賠償することにあります

    刑事事件の加害者は、通常、以下のような責任を、被害者に対して負うことになります。

    • 窃盗の被害金や被害品相当額の金銭を返還する
    • 壊してしまった物の修理費用について損害賠償金を支払う
    • ケガをした被害者の治療費を支払う
    • 被害者が感じた精神的苦痛に対する慰謝料を支払う


    示談金の支払いを通じて、被害者に生じた物的・精神的損害を補填すること、刑事事件の加害者として自らが行った行為について真摯な反省を見せること、和解を通じて被害者からの処罰意思を撤回してもらうこと等が示談の意義といえるでしょう。

  2. (2)刑事手続きにおける示談の効果は?

    刑事手続きにおいて、被害者との示談が成立したことは、被疑者・被告人にとって有利な情状として働きます。
    示談金の支払いによって一応の被害回復が図られたと評価されますし、被疑者・被告人が真摯に反省していることもうかがえるからです。また、被害者から加害者を「許す」という意思を示してもらえれば、当然ながら処罰の必要性も低下することとなるでしょう。

    被害者と示談が成立した場合、起訴前の段階であれば、検察官が被疑者を起訴しないという判断になる可能性が高まります
    また、起訴後の段階であっても、公判手続きにおいて示談成立の事実が考慮され、言い渡される刑が軽くなる可能性があります。

    このように、被害者との示談を成立させることは、被疑者・被告人が重い刑事処分を避けるに当たって、きわめて重要な意味を持っているのです。

  3. (3)示談金額はケースバイケース

    示談金額は、犯罪事案の内容や、被害者が受けた損害の程度などによって、ケースバイケースで決定されます。
    そのため、示談金に一律の相場は存在しません。

    前述のとおり、「被害者に生じた損害を賠償する」ことが基本的な考え方になりますので、具体的に損害額を見積もったうえで、被害者と交渉することになります。
    たとえば窃盗であれば、被害金または被害品相当額をベースとしたうえで、迷惑料・慰謝料として一定の金額を上乗せするのが妥当でしょう。

    どの程度の示談金額を提案すべきかについては、弁護士に相談しながら慎重に検討することをお勧めいたします。

2、示談交渉をすべきタイミングは?

刑事事件の被疑者・被告人となった場合、取り調べや公判手続きの準備などに時間をとられることになりますが、その中でも、できるだけ早期に示談交渉へと着手することをお勧めいたします。

  1. (1)できる限り早く示談交渉を開始すべき

    被害者との示談は、検察官が起訴・不起訴の判断をする前の段階で成立させるのがベストでしょう。起訴前の段階で示談が成立すれば、検察官が起訴しない可能性が高まります

    検察官が起訴・不起訴を判断するのは、通常は遅くとも逮捕・勾留の最長期間が満了する、逮捕から23日後までです。
    それ以前であれば、いつでも起訴・不起訴の判断が行われる可能性がありますので、できる限り早期に示談交渉へと着手すべきでしょう。

  2. (2)弁護士に依頼して迅速な示談交渉を

    とはいえ、被疑者として身柄を拘束されている段階では、被害者との示談交渉のために自分で行動することはできません。また、仮に身柄を拘束されていなかったとしても、加害者が被害者に対して直接連絡を取ること自体、被害者からすると通常は望みませんので、弁護人を間に入れる必要性は高いといえます。
    そこで、いち早く弁護士に相談し、示談交渉を依頼することをお勧めいたします。

    刑事事件の被疑者には、弁護人を選任する権利があります
    弁護人(弁護士)に示談交渉を依頼することで、迅速に被害者との示談が成立する可能性が高まりますので、ぜひお早めに弁護士へご相談ください。

  3. (3)起訴後でも示談は効果的

    起訴されるまでに示談の成立が間に合わなかったとしても、引き続き示談交渉を進めることには大きな意味があります。
    前述のとおり、被害者との示談が成立しているかどうかは、公判手続きで言い渡される刑の軽重に影響するからです。

    特に、実刑か執行猶予かの境目にあるような事案では、示談の成否によって結論が大きく左右されがちです。
    仮に被害者との示談交渉が難航していても、諦めずに根気強く示談の成立を目指しましょう

3、示談交渉の流れは?

刑事事件の被害者との示談交渉は、大まかに以下の流れで進行します。

  1. (1)被害者との連絡を試みる

    示談交渉を開始するため、まずは被害者と連絡をとる必要があります。

    被害者の連絡先は捜査機関(警察・検察)が知っていますので、弁護士から捜査機関に対して、被害者情報の開示をお願いしてもらいましょう
    被害者の方が拒絶されてしまった場合には当然連絡をとることはできず示談も困難となりますが、弁護士が間に入っていることで被害者の方も「話を聞くくらいなら」と連絡先を教えてくれることの方が多いと思います。

  2. (2)被害者との間で示談条件を交渉する

    実際の示談交渉では、被害者との間で、示談金の額を中心とした示談条件を詰めていくことになります。

    双方の提示額に開きがある場合に、被害者をどのように説得すべきか、あるいは被害者側の主張に寄り添って譲歩するかの判断は、なかなか難しいところです。
    加害者が被害者の被害感情を逆なですることだけは避けなければなりません。被害者の感情を逆なでしてしまわないよう、伝え方を工夫する必要がありますので、弁護士とよく話し合ったうえで対応を進めましょう。

  3. (3)示談書を作成・締結する

    示談の内容について被害者と大筋で合意した場合には、示談書案を作成したうえで、被害者に確認してもらいます。
    その後細かい部分の調整を経て、示談書に当事者双方が署名・押印することで、示談は成立となります。

  4. (4)示談金を支払う

    示談書を締結したら、実際に被害者に対して示談金を支払います。
    必ず支払期日までに資金を用意して、確実に示談金の支払いを行いましょう。

    被疑者・被告人が自分だけで示談金を用意できない場合には、親族などに相談して、事前に金策のめどをつけておくことをお勧めいたします。
    支払期日までに示談金が支払われない場合、示談が破談になる可能性が高いですし、むしろ、反省の態度が低いと評価されてしまう可能性もあります

  5. (5)示談書を検察官や裁判所に提出する

    被害者と締結した示談書は、被疑者・被告人にとって有利な情状を示す重要な証拠資料となります。
    そのため、示談書の締結後速やかに、起訴前であれば検察官に、起訴後であれば裁判所に示談書を提出しましょう。

    なお、実際に示談金を支払ったことを証明する必要がありますので、領収証や振り込み明細書のコピーなども併せて添付する必要があります。

4、示談が成立しても、必ず不起訴になるとは限らない

被害者との示談は、被疑者の良い情状を示す資料にはなるものの、それだけで必ず不起訴になるわけではありません。

検察官は、被疑者を起訴するかどうかを、さまざまな観点から総合的に判断しています。
特に、被害の程度が大きい場合や、犯行態様がきわめて悪質な場合等には、示談が成立していても、残念ながら起訴されてしまう可能性が高いでしょう

少しでも不起訴の可能性を高めるためには、被害者との示談を成立させることと併せて、被疑者の更生可能性をしっかりとアピールすることが大切です。
弁護士に相談しながら、不起訴に向けた活動を迅速に進めていきましょう。

5、まとめ

被害者との示談が成立すれば、被疑者・被告人にとって有利な情状事情となります。
その結果、不起訴となる可能性や、公判手続きで言い渡される刑が軽くなる可能性が高まるでしょう。

通常、加害者が被害者に直接連絡を取り、自分で示談交渉を行うことはできないので、早期に弁護士へご依頼いただくことをおすすめいたします。

ベリーベスト法律事務所では、被害者の感情にも配慮しながら、円滑に示談を成立させ、依頼者が早期に刑事手続きから解放されるようにサポートします。
できる限り早い段階で示談交渉へと着手することが、刑事手続きからの早期解放につながります。

ご自身やご家族が、刑事事件の被疑者・被告人となってしまった場合には、お早めにベリーベスト法律事務所 横須賀オフィスへご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています