交通事故の同意書はすぐにサインしても大丈夫なのか

2024年07月25日
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交通事故の同意書はすぐにサインしても大丈夫なのか

横須賀市が公表している交通事故の統計資料によると、2022年に横須賀市内で発生した交通事故件数は、1053件でした。同年の神奈川県内での交通事故件数が2万1098件でしたので、県内の交通事故の約5%が横須賀市内で発生していることになります。

交通事故の被害に遭うと、加害者が加入する保険会社から“同意書”という書面が送られてくることがあります。署名が必要なことから、「サインしても問題ないのだろうか」と不安になる方もいるでしょう。

今回は、交通事故の同意書の概要とサインをしなかった場合の問題点などについて、ベリーベスト法律事務所 横須賀オフィスの弁護士が解説します。


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1、交通事故の同意書とは

交通事故の同意書とはどのような書面なのでしょうか。以下では、交通事故の同意書の種類などについて説明します。

  1. (1)一括対応のための同意書

    まず、同意書には、加害者側の保険会社による一括対応制度を利用するために必要になる同意書があります。

    任意一括対応制度とは、本来交通事故の被害者が病院で支払うべき治療費について、任意保険会社が直接病院に対して支払う制度です。

    交通事故にあって怪我をした場合、当然ながら病院へ行かなければなりません。もっとも、病院からするとたとえ怪我をした人が交通事故の被害者であったとしても治療費を支払ってもらわなければならず、本来は、被害者が病院の窓口で都度治療費を支払うこととなります。この場合、最終的には支払った治療費を計算し、加害者に損害賠償という形で請求することにはなりますが、治療終了までの間治療費を支払い続けなければならず、金銭的に大きな負担を負うため十分な通院が困難になってしまう可能性があります。また、通院が終わった後加害者(基本的には加害者が加入する任に保険会社)に対して治療費の請求をしたとしても、「その怪我は事故とは関係ありません。ですから治療費は払いません」などと言われてしまう可能性もあり、そうなると治療に通うことに躊躇し、十分な治療を受けられなくなる可能性があります。

    もっとも、保険会社としても明らかに事故で負った怪我の治療費であれば、先に支払ってしまっても損になりませんし、また、被害者救済にもなります。さらには、事故当初から、被害者の方の治療の経過を知ることができれば、後々の示談交渉において無用な争点を減らすこともできます。

    そのような関係もあり、現在、多くの交通事故では、加害者が加入する任意保険会社が直接病院に治療費を支払う一括払い制度という制度がとられています。

    このような一括対応をするにあたって、診断書で怪我の部位を確認したり、診療報酬明細等で治療費額を確認する必要がありますが、こういった個人情報に関する書類を病院から取り付けるためには、被害者本人の同意が必要となります。

    任意一括対応の同意書とは、上記のような対応を可能にするために、事故当初、保険会社から送られてくる同意書となります

  2. (2)医療調査のための同意書

    医療調査のための同意書とは、加害者側の任意保険会社が病院などの医療機関に対して、被害者の治療経過や症状について調査することに同意する書面です

    任意保険会社が一括対応により医療機関に直接治療費の支払いをすることは上述した通りですが、保険会社としても無制限に治療を認めるわけにはいきません。
    治療が長期にわたって既に完治していると思われる場合や、逆に、これ以上治療を続けても回復の見込みがない場合等は一括対応を打ち切り、その後は賠償金の話に以降しなければなりません。もっとも、被害者の怪我の状況や今後の見通しを判断するにあたっては、担当医師より詳細な情報を得る必要があります。
    そこで、医療照会といって、書面で病院へ質問書を送付し状況を確認したり、主治医へ直接会いに行って見通しを質問する等して治療の必要性相当性を判断していくことがあります。
    もっとも、医師も個人情報の関係がありますので、本人の同意なく、怪我の詳細な状況、治療条項、今後の見通し等について話すことはできません。
    そのため、保険会社は医療照会を行うにあたって、医療調査のための同意書を取り付け、医療調査を行っているのです。

    医療調査は必ずしも実施されるものではありませんが、治療が長期に及んだ場合や、重症である場合等は、比較的実施されることが多い傾向にあると思います。

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2、同意書にサインしなかった場合、問題はあるの?

加害者側の任意保険会社から届いた同意書にサインをしないと、どのような問題が生じるのでしょうか。

  1. (1)被害者が病院に治療費の支払いをしなければならない

    一括対応のための同意書にサインをしなければ、加害者による任意保険会社による一括対応を受けることができません。そのため、被害者自身で病院に治療費の支払いを行う必要がでてきます。

    被害者が支払った治療費は、最終的に加害者側の任意保険会社に請求することができます。しかし、その際には、被害者自身で病院から診断書や診療報酬明細書の取り寄せをしなければならないため、保険会社に請求する手間も生じてしまいます。

    少しでも手続きの手間を省きたいのであれば、一括対応のための同意書にはサインした方がよいでしょう

  2. (2)一括対応を打ち切られる

    一括対応のための同意書にサインしても、医療照会のための同意書の提出を拒否してしまうと、一括対応が打ち切られてしまう可能性があります。

    医療照会のための同意書は、任意保険会社が被害者の治療経過を把握するために必要な書類になります。医療照会のための同意書が提出されないと、任意保険会社から「治療の必要性を確認することができない」という理由で、治療費の支払いが打ち切られてしまうでしょう。

    治療費の支払いが打ち切られたとしても、治療を継続する必要性がある場合には、引き続き治療を続けることは可能です。しかし、その際の治療費は、被害者が直接病院の窓口で建て替えなければなりません。
    また、保険会社としてもいったん治療の必要性がないとして治療費の支払を打ち切っていますから、その後、打ち切り後の治療費支払を求めても、拒絶してくる可能性は高いでしょう。

    そのような手間を考えると、保険会社が認めている限りは一括対応をしてもらった方が無難ですし(少なくとも損になることはありません)、医療照会に応じるということで同意書は返送した方がいいでしょう

3、同意書の対応前に弁護士へ相談するべき理由

同意書を提出する前には、弁護士に相談するのがおすすめです。主な理由を3つ解説します。

  1. (1)同意書の提出が必要な理由を説明してもらえる

    保険会社から同意書が送付されてきた場合、内容や目的がわからないまま、漫然とサインをしてしまう方も少なくないでしょう。結論として、上記で記載した同意書は返送をする方がいいとは思いますが、個人情報に関するものですし、むやみやたらと理由もわからず同意するのも少し気が引けるでしょう。
    弁護士に相談をすれば、どのような種類の同意書で、どのような目的で同意を求められているのか、かみ砕いて説明してくれるでしょう。

  2. (2)治療費の支払いが打ち切られた場合の対応を任せられる

    医療照会の同意書が届くということは一括対応の打ち切りを保険会社が検討している可能性があります。
    そういった場合でも、弁護士であれば、ポイントを押さえた意見書を作成するなどして、治療費打ち切りの延長を交渉することができます。同意書へのサインは、治療費の支払いを打ち切られるタイミングであることも多いため、同意書が届いたら、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします

4、まとめ

加害者側の任意保険会社から同意書が送付されてくることがあります。基本的には、同意書にサインをするメリットが多いといえますが、目的や状況によっては慎重に判断しなければならないケースもあります。

同意書にサインをするかどうかの判断を迷う場合には、まずはベリーベスト法律事務所 横須賀オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています